マンガボックスインディーズで連載されている「ぐうたらぽっちの美容師奮闘記」が示唆に富んでいて異様に面白いです。ニートのぽっちが親が経営している美容室の手伝いをはじめるところから話がスタートします。
ぽっちのぶつかる職人としての壁
美容師からはじめて今では美容室の経営から別の事業まで展開する経営者の母親を持つぽっちですが、ぽっち自体に美容師としての才能は全くありません。しかし、そんなぽっちが苦悩の末に美容師としての技術を獲得していく(注:現在第102話ですが、まだお客様の前に出られていません)過程でぶつかる壁、その壁に悩むときに様々な人から投げかけられる言葉が、職人の世界の厳しさ、そしてそんな世界に飛び込むためのヒントを与えてくれます。
「自己採点してみようか」(第26話)
ヘアブロー技術のコンテストで「勝ちたい」と思ったぽっちが、店長に勝つために必要なことを聞いたとき、店長がぽっちに言った言葉。今ウィッグにしたヘアブローを採点してみよう、と言うんですね。
こういう質問をされると、謙遜して小さめの点数を言った方が良いのかなー?なんて思うのが人の常で、ぽっちももちろんそう考えます。そんなとき店長がぽっちにこう言います。
「どう思われるか気になって点数つけれんのやろ。自己採点はやる気確かめるために聞いてるんちゃうで」
「点数は点数や。この中でだれだけ正解があって、どれが正解じゃないかの結果、それが点数や」
「点数は正解を知っとかな、つけれんのや」
「勝ちたいのなら正しい解答を知らなあかん」
「頑張ってるとかは点数ちゃうで」
作ったものが良いか悪いか、というのは、正解が分からないと分からないんですね。常に正解が必ずあるとは限らないですが、守破離の守の間は「正解を知る」というのが何よりも基本であるというのは、僕自身の経験からも納得ができます。
「何となく」では、成長できないんですよね。
「それでももし勝ちたい思ってるなら、せめて今からいうことをクリアして」(第62話)
ヘアブローのコンテストも無事終わり、次はパーマのコンテストに出ることになったぽっち。しかしなかなかロッドを上手く巻けず、苦戦します。そんなとき、全国大会の常連覇者である従姉にアドバイスを求めます。
しかし自分では十分に多い(というか物理的に無理)と思っていた練習時間を「甘い!」と叱咤されてしまいます。
「ぽっちん、私も忙しいんや。練習してるのをほめてもらう練習興味ないし、それならそうゆんをもっと上手くほめてくれる人に頼まなあかんよ」
などと直球どストレートに言われてしまい、ボコボコに叩きのめされてしまうぽっちですが、
「それでももし勝ちたい思ってるなら、せめて今からいうことをクリアして。それがクリアできたらちょっとくらいみてあげてもいいわよ」
と、こんなことを言われます。
「問題点を書き出して 出来たやつから消していく。」
「これができれば見てもらう必要ないではないか・・・」と思うぽっちですが、これってとても大事なことなんですよね。つまりこれは、振り返りなんですね。
「問題を見つける」→「それに対してのアクションを決める」→「アクションを実行する」→「そのアクションが適切だったか/効果があったか振り返る」→「問題を見つける」→(繰り返し)
という感じですね。
問題をしっかり潰していく、というのは成長に欠かせない施策の一つです。
自分の日常を振り返って
僕は職業プログラマなので、ソースコードに対する一つ一つのコミットが作品であり、自己採点の対象です。それが良いか悪いか分かるためにはもちろん正解を知らなければならないので、「点数は正解を知っとかな、つけれんのや」という言葉はとっても納得ができます。ちなみにソースコードの正解に対しては、こんな本から学んでいます。
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また「ここからどうすればいいのか?」を考えるとき、まず問題点を洗い出してその問題点に対してアクションするべきというのは、何とも基本的なことですよね。この漫画を読んでいると、何というか初心に返る気持ちがして、何故か身が引き締まります。マンガボックスで無料で読めるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。