人を子供扱いすれば、子供のような仕事しかしない。
小さなチーム、大きな仕事はある意味僕の人生を変えた本なのですが、その本の中でも一番好きな一節です。
子供のように扱われているのかも知れない
この一節のあと更に、こんな言葉もあります。
何にでも許可を必要とする環境は「何も自分で考えない文化」をつくる。
この本を読んでいるとき、僕は日本有数の企業のかなり大きなプロジェクトにおりまして、そこでの決まり事の多さには本当に辟易しておりました。
そもそもジョイントベンチャーで推進されているプロジェクトだったので、その会社間で話がまたがると結構面倒くさいことになる。さらに加えて、その下には無数のサブコン(下請け)がいるわけでして、何か話をつけようとすると、確かに決まり事がないと上手く回らない。
決まり事とは「大きなチームの中で円滑に物事が進むようにする仕組み」だったのです。
そして許可。決まり事にしたがって物事を進めるためには、多段階の許可が必要です。なぜ許可が必要なのかというと、「ちゃんと決まり事の通りにしたか」を誰かが確認するため。決まり事に対する担保なのです。
当時の僕は「決まり事を熟知し、上手く活用すること」が上手く仕事を回すコツだと考え、いかに決まり事を上手く使うか、ということを最重要視して考えていました。それは当然のことで、悪いことでもなんでもないし、今僕があの場に行ってもそうすると思います。
でもね。
いつかプロジェクトには終わりが来るし、また次のプロジェクトに行けば、そういった決まり事が、また用意される訳です。
・・・用意される? 誰かが何らかの観点で考えて、決まり事を用意するので、僕にしてみれば、確かに用意されることになります。
そういった決まり事に対して、いつでも納得できていたかというと、そんなことはありません。実際に辟易もしていたわけですし、酒を呑めば愚痴も出るかも知れません。むしろ、辟易するような不経済な仕組みは、変えていきたい。
そうやって考えて、小さなチーム、大きな仕事のあの一節に出会ったとき、自分は本当に子供だったんだなーと思いました。仕組みの上で働いて、仕組みに文句を言っている。だけれども、自分では仕組みを変えられないので、どうしようもないと思っている。
何が一番イヤだったかと言うと、そういった決まり事の本当の背景を知ろうとしなかったし、仕組みをつくる側のステージのことを考えていなかった。あのまま僕が歳をとっていって、いざ仕組みをつくる側になったとき、そのままの思考回路で、より良い仕組みをつくれたか?と言うと、恐らくつくれなかったのだと思います。つくったところで、若い人にブーブー言われるような仕組みをつくったんじゃないかな、と思います。
だからね、どんなに自分が下の立場だとしても、いざ自分が仕組みをつくる立場にいる気持ちで現場を見ていないと、得るものもないし、自分がイヤだなーと思っているものに、いつの間にか組み込まれてしまうのだよなと、そう感じたのでした。
そこから変わらないと、本当に子供のように扱われたままになってしまう。そのままでいて、結婚して子供をつくって、ちゃんと収入がある状態を維持するなんて、不可能なんじゃないか。
そう思っていろんな行動をするきっかけになって、そんなこんなで今の僕があるわけでして、振り返るとこの一節にずいぶん人生を変えられたなーと思います。
そんな本がオフィスに転がっていて、つい手にとったときにこの一節が見えたので、ついこんなことを思い出してしまったのでした。
人を子供扱いすれば、子供のような仕事しかしない。
早川書房
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