「The DevOps 逆転だ!」は最高のITエンターテイメント小説

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会社の本棚に仕舞いこんであったThe DevOps 逆転だ!を読了しました。1つ機能をデプロイしようとするだけで2週間も3週間もかかるような悲劇的な現場が、経営から最終通告を突きつけられた後、起死回生の逆転劇を繰り広げるITエンターテイメント小説なのであります。

この90日間に奇跡を起こせたら、ITを社内に残すことを検討しよう。

ビジネスとIT

結果的に1日に何回もデプロイできるような自動化プロセスを作り上げることで、ビジネス要求からITによる実現までのサイクルが短縮化され、IT投資に対するビジネス成果を継続的に獲得することができ、会社の業績も回復した、というあらすじの小説なのですが(ネタバレだけど、題名から何となく分かりますよね・・・)、個人的に重要なポイントはそこではなく、ビジネス目標とITをきちんと結びつけて「どんなことをITで実現すれば、どんな成果が得られるか」ということをビジネス部門、IT部門が一緒に共有して前に進むことができた、というところだったなと感じています。

そもそも改善が行われる前の姿は、

  • マーケティングの遅れやサービスの悪さでどんどん競合に引き離される。その問題の根本にITがある。
  • 経営には「何か大きなことを始めようとするたびにITが立ちはだかる。IT抜きではゴミすら拾えない。もうたくさんだ」と苦言される。
  • IT運用の人員は決定的に足りないと上申すれば「問題外だ」と一蹴され、更に「むしろ人員削減を考えなくてはいけないぐらいだ」とやぶ蛇になる。

といったとてもつらい状況にあり、主人公はそんなITの運用担当VPにいきなり任命されるわけで、ハッピーエンドで終わる話とはいえ可哀想な話です。いやー、つらい。

そんな中、突如取締役候補に挙がったエリックという謎の人物の助けを借りて、かの有名なエリヤフ・ゴールドラットのザ・ゴールにある「制約理論」をITの現場に応用し、順調にIT運用業務のスループットは改善していくわけですが、ここで終わったら単なる業務の改善話なのであります。

そもそもIT以外の人間からは依然として「ITは壊れている、使い物にならない、期待するだけムダ」という印象を持たれているわけで、ここを根本解決するためには「ITはあなたたちの事業を助けるためのツールですよ」という観点でビジネスオーナーと手を組み、ビジネスオーナーの目標の真の助けにならなくてはいけません。そんな中、社内の各ビジネスオーナーにヒアリングを行い、ビジネスの真の助けになるためにはどうすれば良いか?という観点でITの立て直しができたというところが本書の見所だと思います。

「1日に何回もデプロイできるようになる」というIT目標も、「規模を小さくしたリリースを短期間で実現することでIT投資に対するキャッシュバックを高速化し、内部収益率の基準をクリアする」というビジネス要請から来ているわけで、「技術的にそっちのほうがカッコいい」とかそういう理由ではないわけです。

個人的には「アジャイル開発ではこうやっている」みたいな陳腐な話ではなくて、上記のように自分たちのビジネス要請を上手くこなすために進化させた結果DevOpsになった、という話の流れがとても良いし、好きだなと思いました。

10年後には、実力のあるCOOはみなIT出身者になると思う。ビジネスを実際に動かしているITシステムを我が物として理解していないCOOは、誰かほかの人に自分の仕事をしてもらっている空っぽのスーツだ。

という意見はちょっと著者の願望が入り過ぎている気もしますが、僕個人としては継続してITシステムを上手く使うためのお手伝いをさせていただければと思っております。

The DevOps 逆転だ!
The DevOps 逆転だ!
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